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夢にまで見たバックカントリーツアー |
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by M.Yaguchi
今(冬)シーズンの最大のテーマだった”バックカントリースキーツアー”への参加がようやく実現した。 |
カリスマスキーヤー:山田誠司氏がガイドする長野県小谷温泉の山田旅館に泊まり、2日間のバックカントリースキーツアーへの参加は、今年始めたテレマークスキーの総仕上げと位置づけて、今日まで練習を積み重ねて来た。
ゲレンデではかなり上達したと自信を漲らせての参加だったが、春の深い悪雪に翻弄され、身も心もズタズタにされた2日間だった。
やっぱりオフピステでのテレマークスキーはそんなに甘くはない。 |
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参加者は、一緒にスクールに入り練習してきたマネージャーと、蒲田軍団のI原さん、コック長:S木君、スノボの名手:U月さん夫妻の6名・・・
I原さん、S木君の両名はこの日の直前に山スキーを購入、前日スクールに俄か入校して臨むという、かなり無謀とも思える参加だった。
名手U月夫妻は、バックカントリーは始めてということで、ツアーには参加せず、誠司氏の紹介でバックカントリーのイロハを受講した。 |
11日(土)am8:30山田旅館前に集合、レクチャーを受けてガイド8名と参加者25名、総勢33名が旅館裏から、今日の目的地”大渚山”(1,563m標高差710m)を目指す。天候は快晴無風という絶好のバックカントリー日和、一行は山田隊長のゆっくりゆっくりした足跡を踏みしめながら歩を進める。
10分も歩くと汗が滴り落ちてきてサングラスを曇らせる。
3人の仲間も、滴る汗をものともせず黙々とついて行く。
ブナの実やツルアジサイの枯れ落ちた花が雪の上に落ち、疲れた気持ちを和ませてくれる。ブナの木に赤ペンキで番号が書かれたサインのある鎌池を迂回、湯峠では今にも雪崩れそうな箇所を、ガイドが一人一人を的確にサポートしてくれる。そして大渚山を間近に仰ぎ見ることの出来るブナ林のそばで昼食の長い休憩に入る。 |
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大渚山の向かい側には雨飾山(1,963m)の雄大な姿が見える。 |
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コック長が早速コンロで湯を沸かしリゾットやパスタを手際よく料理してくれた。
I原さんと僕は”気付け薬”で喉を潤しエネルギー?補給、1時間の休憩は瞬く間に終わる。 |
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さあ、気を引き締め、頂上目指しアタックに入る。40度の急斜面を、前の人の足元だけを見据え一歩一歩登る。 |
急斜面でのキックターンが難しい。頂上直下からはスキーを外し、ザックに固定し歩いて登る。あまりにも急斜面のため膝が斜面についてしまう・・・ |
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旅館をスタートして5時間余りかけて頂上到着。
いや〜しんどかった・・・雨飾山、日本海、妙高山、戸隠連山と360度の展望は圧巻だ。少し風も出てきたので速攻で準備を終え、いよいよくだりに入る。
スター直後は40度の急斜面、山田誠司氏の美しいテレマークスキーに見とれ、ガイドの合図で順次ブナの樹林帯を滑降して行く。 |
さあ、僕の出番が来た。斜面に対する恐怖感は無い。一気に滑り降りるが1ターンも出来ずあえなく大転倒!!後に続くマネージャー、I原さん、コック長も苦戦を強いられる。なんど転倒したら済むのだろう?・・・もう気持ちはズタズタに引き裂かれていく。こんなハズじゃ無かった・・・
斜滑降、転倒を繰り返し、イイところ無しで7時間余りに渡った初日ツアーはこうして終わった。 |
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山田旅館の大湯元温泉に入って疲れを癒す。
小さい谷、と書いておたりと読む小谷温泉。姫川の支流、中谷(ナカヤ)川をさかのぼること約12km。山の中腹に位置する小谷温泉、その歴史は古く、1555年に武田信玄の家臣によって発見されたといわれている。西に北アルプス連峰を望む、標高850mに湧く山のいで湯・・・あの「日本百名山」の作家深田久弥もたびたび訪れたという江戸時代に立てられた木造3階建てのこの旅館は、釘を一本も使わずに立てられ有形文化財に指定されているという、まさしく秘湯・名湯である。 |
風呂に浸かっていると珍しい仲間に会う。
「あれS木さん?なんでここへ?」、「オヤ、矢口さんもスキー?」・・・などなど言葉を交わしながらことの顛末を・・・アウトドアの名人、とれとれチームのS木さんとこんなところで出くわすとは・・・ |
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部屋に戻ったところに、山田旅館21代当主の誠司さんが、ワザワザビールを持って現れる。一同感激!!
夕飯までの2時間、バックカントリーの面白さや、先日トリノで開催された山岳スキー選手権での戦いを語ってくれた。
こうして初日は、面白くも苦しい残像を脳裏に焼きつけ暮れていく。 |
夜半、ザアーザアーと大雨の降る音がする。
朦朧とした頭のなかで「ああ〜明日は休みだ。ゆっくり温泉を楽しもう・・・」と夢心地に浸っていたのだが、起きて見ると雨は湿雪に変わっていて、ゆっくり温泉の目論見はもろくも崩れ去る。う〜ん・・・ |
朝食を済ませ、防雨対策と思ったがレインコートの下に着るウエアの用意をしていないことに気がつく。さすがにマネージャーは真っ赤なレインコートを身にまとい颯爽と現れる。カッコイイー!!ガイドからは「これが一番です。」と声が飛ぶ!
am8:30、点呼をとり鎌池を超えたところまでのバックカントリーに向かう。今日のツアーは約4時間30分の行程だ。スタート直後は雨、登る毎に湿雪に変わり頂上付近は雪と風に変わっていて補給食を摂るのもそこそこにくだりに入る。かいた汗は急速に体力を奪っていく。手の指先は悴んで感覚が無い。それでも参加者は、雪まみれになりながらブナやミズナラの樹林帯を転げ落ちて行く。 |
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ワァー、キャーという歓声やら悲鳴がブナ/ミズナラ林に木霊する。雪に覆われた鎌池を渡り、最後は昔スキー場があったゲレンデに到着する。滑りを邪魔する木立ちは無く、適度な斜面に向かって最後の滑走に入る。
ここでやっと練習を積んだ成果が少しだけ発揮出来た。
誠司師匠に「練習して来たというのがホントだったね」と声を掛けられたのがせめてもの救いだった。I原さん、コック長、マネージャーも最後は、安堵感とともに満足した表情に変わっていた。
午後1:00過ぎ、念願だった2日間に渡る”バックカントリースキーツアー”は、諸々の体験を心・体にしっかりと刻んで無事終了した。 |
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